前回1/4に寄稿しました米中貿易戦争について、
協議分野を整理しました。
なぜ年初の初寄稿にこの議題を選んだかと言いますと、
2019年、いえ、これから世界経済の行方に大きく関わってくると誰もが思っているからです。
例えば、米中貿易戦争が本格化すれば、
経済面で言えば、世界経済の収縮し世界の成長が後退すると不況に陥ってしまう。
皆この様な想像をしていないでしょうか?
この根拠にはリカードの比較優位性がよく使われます。
農業に強い恵まれた国は農産物を、製造業に強いインテリジェンスは電化製品を生産する。
このように自国の得意分野に特化し、生産を集中させれば、世界全体で見れば生産物が増えるのである。
そう、”理論的”には”である”のです。
しかし、この考えは政治的にはいつまでも許容されることではないと考えています。
少女が女性になるにつれワンピースなどのかわいい服から
清潔感があり化粧に似合うスーツに移り変わって行くように
国も人と同じく成長します。
そして、大人になれば欲が生まれます。
経済が上向いている時は、その欲望は満たされていますが、
経済が停滞すると、いつしか国民は現状にすら不満を抱くようになります。
もっと豊かになりたい!これは不公平だ!!そして自由を欲しい!!!
罪深いのは人間の十八番です。
穿った見方をすれば、その願いを叶えるのが近代では政治家の役目ではないでしょうか。
(古くからの既得政治家達はその逆であるかもしれません…)
そうなれば、政治家は国民の人気取りをするため、自分たちの身の保身のため、
他国の富を奪おうとする行動をとってきました。
今までの”富を増やす”行動から、”富を奪う”行動に変わるのです。
昨今の中国は、第二段階であるアメリカ資本主義への”不公平”に立ち向かう
挑戦者ではないだろうか?
いつまでも、固定化された上下関係に甘んじられるほど、
人の感情は単調ではありません。
そこで、アメリカ資本主義下の不公平は何か整理したいと思います。
<<アメリカ資本主義下の不公平>>
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①ドル基軸体制(通貨の直接取引)
②ドル建ての原油先物の取引(人民元取引)
③台湾の中国統合
もちろん、支流派の立場からも考察が必要です。
<<アメリカ資本主義の維持>>
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Aドル基軸体制の維持(クロス通貨取引)
B共産主義の解体(資本主義の優位性維持)
C中国の海洋進出
不公平を改善するには、ドルの基軸体制を改める必要があります。
アメリカ覇権の基礎になっているのは基軸通貨が米ドルであるからです。
世界の産油国から原油が輸出されていますが、米ドルが基軸通貨であるため代金はすべて米ドルで支払われています。
産油国は、自国通貨に変換すると需要と供給のバランスから自国通貨が上昇してしまうのを嫌い、
受け取った代金を米ドルのままアメリカ国内の市場に再投資せざるを得ませんでした。つまり、今の為替取引は米ドルを自国の通貨に両替するとその通貨価値は上昇するので、輸出国にはとても不利なルールなのです。
そして、アメリカはそのニーズを巧みに汲み取り、投資魅力ある国債利回りや商品を開発し、
各国に開放したアメリカ市場に世界のあらゆる地域からの投資マネーを留めさることに成功しているのです。
今後も米ドルが世界の基軸通貨のままであれば、米ドルが自動的にアメリカへ還流するシステムが健在している限り、
アメリカ政府の財政赤字は国債の販売を通して補填されるので、覇権国としての基盤が築かれるのです。
これを打開するには、単に元が国債通貨に至るだけでは足りなくその利益を再投資させる仕組みが必要なのです。
仮に原油の元決済が活発化するには必要条件です。そう言う意味では中国経済の開放は中国にとっても悪い話ではありません。
そして、アメリカも中国が自由経済の効果から資本主義への移行を狙い、共産主義の解体を狙えるため
お互いの利益が一致するとも言えます。
よって、私は今回の米中会談で話が進展する議題を考えています。
進展すると言っても、合意に至ってから2~3年は掛かると見ています。
それは、アメリカが中国に進出するための準備期間が必要だからです。
その進捗を見る指標としては、人民元の為替レートを注目したいと思います。
投資・開発をするには元が必要です。
従いまして、元の上昇が120日移動線を超えて安定するときに、
両国間である程度の基本合意ができたのだろうと推測します。
当然、覇権国家の地位を脅かす行動でしょう。
と言うことは、”ドル基軸体制の維持”と多くの人は考えていると思います。
しかし、私はそうは予想していません。
なぜなら、アメリカは奇しくも世界一の大国です。
今の国債が持続可能と楽観視している国とはとても思えません。
アメリカは自国に都合が悪くなれば、自分でルール変更をする国です。
ディールの材料としては最高で、且つ自国の利益は最小限に抑える方法さえとれば
アメリカ第一主義は維持できるはずです。
中国は、元建てで原油の取引が活性化し、
元が国際通貨の地位を得る。
そして、その元の受け皿として中国は市場を開放し、
アメリカが中国に本格進出し始める。(おそらく保険や金融関連の事業が多い。)
その前触れとして、元がドルに対して高くなる。
こんなことをアメリカが許すだろうかとの疑問があるのも理解しています。
ただ、将来に渡って原油が通貨の裏付けとなる時代が続くのであろうか?
自然エネルギーやバイオエネルギーの発展や、その電気をストックする蓄電技術の発達、
そして自動車の自動運転により、ひとり一台から1台を複数でシェアすることにより
効率化から需要が減退すれば、産油国を維持するだけの価値は見いだせなくり、
稀有性がなくなれば原油はコモディティ化し、価値の裏付けとならない日が近いうちに来ないだろうか
ならば、今元と原油の結び付けを強固に反対する理由はないだろう。
また、ドル需要についても、
中国の知的財産を認めさせれば、ドルの取引量を増やすことはできます。
この辺りは、戦術の問題ですので色々発想することは容易かと思います。
最後に、アメリカと中国の将来の国家戦略の駆け引きについてウォッチしていきたいと思います。
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